
うつ病と診断されたご家族を支えておられる皆さまへ。
共感が回復の土台になります
急性期のうつ病では、周囲が良かれと思ってかける「励まし」や「気晴らしの誘い」が、かえってご本人の負担になることがあります。まずはその可能性をご理解いただくことが、適切な支援の第一歩です。この時期は、問題を解決しようとしたり、前向きにさせようとしたりするよりも、気持ちに寄り添うことが何より大切です。
「つらいね」「苦しいよね」「あなたの味方だよ」
このように、感情をそのまま受け止める言葉が、ご本人の安心につながります。
人は、「わかってもらえた」と感じたときに、はじめて心が少し緩みます。その安心感が、回復の土台になります。解決よりも、共感を。それが、急性期のうつ病の方に対して、ご家族ができる最も大きな支えです。
励ましや気晴らしが負担になる理由
急性期のうつ病では、物事を否定的に受け取りやすくなります。「頑張って」「元気を出して」と励まされても、本人は「頑張りたいのに頑張れない」「期待に応えられない自分はだめだ」と感じ、自責の念をいっそう強めてしまうことがあります。また、うつ病では「興味や喜びを感じる力(興味・喜びの喪失)」が低下します。そのため、気分転換の機会を設けても、楽しさを感じることができず、かえって疲労だけが残る場合があります。それでも「断ってはいけない」と無理をして応じてしまうことも少なくありません。これらはすべて、病気によって生じている症状です。怠けや甘えではありません。
ご家族にお願いしたいこと
・安心できる環境を整えること
励ますよりも、「あなたのペースでよい」「今は休む時期だ」と伝えることが重要です。否定しない姿勢が、患者さんの安心につながります。
・休養を確保すること
家事や社会的責任の負担を可能な範囲で軽減し、十分な休養を取れる環境を整えてください。休養は治療の基本です。また、公的な支援制度や福祉サービス、職場の制度など、利用できる社会資源を活用することも重要です。こうした制度は、ご本人だけでなく、ご家族の負担軽減にもつながります。ご本人が休める環境を整えること、そしてご家族が抱え込みすぎないこと。その両方が、安定した回復につながります。
・治療継続を支えること
通院や服薬の継続は、回復に不可欠です。必要に応じて付き添いや見守りを行い、主治医と連携してください。
・自殺のサインを見逃さないこと
うつ病では、自殺念慮が症状として出現することがあります。こうした変化が見られた場合は、速やかに医療機関へご相談ください。これは本人の意思の問題ではなく、治療を要する症状です。
・距離の取り方も「支援」の一部です
ご家族が支えようと強く思うあまり、すべてを抱え込んでしまうことがあります。しかし、過度に背負いすぎることも、反対に突き放しすぎることも、どちらも双方にとって大きな負担になりかねません。大切なのは、見守りながら、必要なときに手を差し伸べること。本人の力を信じて見守ることも支援のひとつですし、つらさが強いときにそっと支えることも、もちろん大切な支援です。支え続けるためには、無理をしすぎないことが重要です。また、ご家族が仕事を辞めることは、原則として必要ないと私は考えています。支える側が社会から孤立してしまったり、「自分のせいで家族の人生を奪っている」とご本人が感じてしまったり、経済的不安が新たなストレスになる可能性があるからです。うつ病は、回復までに時間がかかることもある病気です。長く支えていくためには、支える側の生活基盤も守られる必要があります。まずは、勤務形態の調整や休暇制度の活用、外部支援の導入など、負担を減らす工夫を検討しましょう。公的制度や福祉サービスを利用することも大切な選択肢です。支える方の生活を守ることも、治療の一部です。
・ご家族自身の休息もとても大切です
支える側が疲れ切ってしまうと、継続的な支援は難しくなります。自分の時間を持つことや、安心して気持ちを話せる場を確保することは、決してわがままではありません。長く支えていくために必要なことです。同じ立場の方と悩みや不安を共有できる家族会や自助グループも、支えのひとつになります。同じ経験をしている人と話すことで、「自分だけではない」と感じられたり、気持ちが少し軽くなったりすることがあります。地域の当事者グループや家族会は、お住まいの地域名を入れてインターネットで検索したり、精神保健福祉センターや各自治体の精神保健福祉担当窓口(障害福祉課や保健センターなど)に問い合わせることで情報を得られることがあります。参加は義務ではなく、見学のみ可能な場合も多くあります。合わないと感じたときは、無理をする必要もありません。
最後に
ご家族自身も大切にしながら、長い目で見守っていくこと。それが、うつ病の急性期を支えるうえで最も大切な姿勢です。ご家族が安心していられることが、結果としてご本人にとっても大きな支えになります。この記事が、日々の関わりの中で、少しでも参考になれば幸いです。
執筆・監修
ありのままこころのクリニック
院長 関 一誠
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