大人の発達障害
大人の発達障害
発達障害は、生まれつき脳の発達に特徴があることで、認知や行動、対人関係などに独特の傾向が現れる状態を指します。子供の頃から特性はありますが、症状の程度は人それぞれで、幼少期や中高生位までは「少し個性的な子」と思われるだけの方も多くいます。大学や専門学校、社会人になって周囲や社会から求められるものが高度化、複雑化することにつれて社会生活の中で困難が目立ち、受診される方が近年増えています。
発達障害は下記の種類があり、複数の障害が重なって現れる(併存といいます)こともあります。また、発達障害そのものではなく「周囲の理解不足」「本人の自己否定」「環境のミスマッチ」などから、二次的なこころの不調を抱える方も多いです。適切な支援があれば二次障害を防ぐことができるため、気になる症状があった場合は早期の受診をおすすめします。「なんとなく生きづらい」「周囲とうまくいかない」と感じたら、ひとりで抱え込まず、どうぞお気軽にご相談ください。
ADHD(Attention-Deficit / Hyperactivity Disorder:注意欠如・多動症)は、発達神経の特性によって、「注意の持続が難しい」「衝動的に行動してしまう」「落ち着きがない」といった傾向が見られる状態です。かつては「多動性障害」とも呼ばれていましたが、現在では不注意が主な症状の方も多く見られるため、「ADHD」という呼び方が定着しています。
ADHDは「本人の努力不足」ではなく、脳の働き方の特性によるものです。主に前頭前野(脳の前側)の働きが関係しており、ドーパミンやノルアドレナリンといった神経伝達物質のバランスが関係していると考えられています。遺伝的な要因も強く、家族にADHD傾向のある方がいるケースもあります。
ADHDの症状は、大きく以下の3つのカテゴリーに分かれます。
よくある困りごとの具体例として下記などが挙げられます。
大人では、「多動性」は目立たなくなることもありますが、内面的な落ち着かなさや焦燥感として現れることがあります。
ADHDの治療は、薬物療法と心理社会的支援を組み合わせて行います。
必要に応じて、ストラテラ(アトモキセチン)やインチュニブ(グアンファシン)を処方します。副作用や効果には個人差があります。丁寧にご説明の上、処方します。
忘れ物対策やスケジュール管理など、「困りごとへの具体的な対応策」を一緒に考えていきます。自己理解を深めることで、自尊心の回復にもつながります。
生活習慣の見直し、家族や職場との連携による環境調整を行います。
必要に応じて、福祉サービスや就労支援との連携も可能です。
自閉スペクトラム症は発達障害のひとつで、対人関係の築き方やコミュニケーションの取り方、興味や行動の特徴に独自の傾向がみられる状態です。かつては「自閉症」「アスペルガー症候群」などに分類されていましたが、現在はすべて「ASD(自閉スペクトラム症)」という一つの診断名にまとめられています。“スペクトラム”とは「連続体」という意味で、人によって特性の現れ方がさまざまであることを表しています。
ASDの特性は人によって異なりますが、一般的に次のような傾向がみられます。
発達の早期からあらわれますが、大人になってから気づくことも
ASDは生まれつきの脳の発達の特性によるもので、多くの場合、幼児期から何らかの特徴が見られますが、症状のあらわれ方には個人差があるため成人期になってから社会生活において困難さを感じ、受診に至る方も多く居られます。 大人のASDでは、以下のような悩みで受診される方が増えています。
ASDの治療は、心理社会的支援と薬物療法(必要に応じて)を組み合わせて行います。 ASDは、脳の特性の一つであり、「治す」ものではありません。ただし、特性によって日常生活に支障が出る場合には、支援や工夫によって負担を減らし、自分らしく過ごすことができます。「苦手なことに無理に合わせる」のではなく、「自分の特性を理解して、安心できる環境をつくる」ことが大切です。ASDそのものを「治療」する薬はありませんが、以下のような方法で「生きづらさ」や「困りごと」を軽減できます。
ASDは外から見ただけではわかりにくい特性です。「なぜそうなるのか」を理解していただくことで、ご本人の安心や自尊心が守られます。
無理に変えようとせず、特性を受け入れ、支える姿勢が大切です。
学習障害は、知的発達に大きな遅れがないにも関わらず、「読む・書く・計算する」など特定の学習分野で著しい困難がある状態です。子供に診断されることが多いですが、大人になってから気づく人も少なくありません。大人になると学業から仕事・生活にシフトするため、困りごとにも変化があります。
大人の学習障害も適切な支援を受けることで、仕事や日常生活の質を大きく向上させることができます。